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養老孟司の“逆さメガネ” (PHP新書)
養老 孟司

定価: ¥ 714
販売価格: ¥ 714
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おすすめ度:

発売日: 2003-08-02
発売元: PHP研究所
発送可能時期: 通常24時間以内に発送
視野の上下が逆転する特殊なメガネがある。「逆さメガネ」だ。人間の知覚や認知を調べる実験道具で、このメガネをかけてしばらく慣らせば、普通に行動できるようになるという。それほど、人間の脳の適応力は大きいわけだが、この「逆さメガネ」をかけて世の中を、特に教育の世界をのぞいてみたのが本書だ。逆さメガネをかけるのは、『唯脳論』、『バカの壁』などで独自の知の地平を切り開く解剖学の第一人者、養老孟司である。 著者はいう。人間は刻々と変わっている。ところが、いまの社会は「変わらない私」を前提にしている。「変わらない私」と思い込むのは、いまの世の中の見方をそのまま受け入れているからだ。だから、世の中の大勢の見方と反対を見ることができる「逆さメガネ」をかけなければ、本当の姿は見えてこない、と。そして、人が変わらなくなった社会で、最も苦労しているのが子どもたちだと指摘する。なぜなら、子どもは一番速やかに変化する人たちだからである。そのことに気付かなければ、教育の本質を見失うことになる。 ではなぜ、私たちは「変わらない私」と思い込むようになったのか。原因は都市化社会にあった。都市的合理性、多数決による社会常識が、いつの間にか「逆さメガネ」になっていたのだ。著者は本書で、「あまり一つの見方でこり固まってしまうと危険だということです。ときどき、私のように『逆さメガネ』で見る視点を持ってくださいよ」とメッセージを送っている。(清水英孝)
「逆さメガネ」ではなく「素メガネ」でしょう
養老先生が、「教育」を中心とした諸問題を、世の常識に「逆さメガネ」を掛けて論じた本。だが、読んだ印象は単なる常識論で、とても「逆さメガネ」を掛けての逆説とは思えなかった。
話題が飛ぶのと、問題だけ投げ出して結論を述べないスタイルを貫いているので、意図が汲み取りずらいが、纏めれば以下のようであろう。現在の諸悪の根源は"都市化"である。もっと"自然"になるべきである。脳は意識化という働きをするが、体は自然である。人類は元々、体一貫でスタートしたのだから、自然をベースに思考・行動すべきである。
これだけの事を言うのに、本を一冊執筆する必要があるのであろうか。また、上述したように内容に目新しい事が書いてある訳でもなく、啓発される点もない。読者層をナメているのではないか。「バカの壁」に続いて騙された。
〈逆さメガネ〉をかけているのは誰だろう?
タイトルには明示的に示されていませんが、
話題の中心は「教育」です。
子育て・大学紛争・文武両道等、
養老先生から見た教育の風景が
育てる側/育てられる側、教える側/教えられる側から、
角度を変えて語られます。
しかし、『バカの壁』を先に読んだせいか、
この本は『バカの壁』に比べて語り口が「ベタ」で、
何だか"養老「翁」"が
昔話を語っているかのような口調に感じられました。
そういう直接内容とは関係ない、変な所が気になりました。
(逆に言えば『バカの壁』のほうが
語り口としては洗練されている、ということに
なるのかもしれません。)
先生の論には共感し、納得しつつ得るところが多くありましたが、
「〈逆さメガネ〉をかけているのは、果たして私か、世の中か?」
この問いの答えは、最後まで出ませんでした。
何だか『洞窟の比喩』みたいな話ですけど。
唯脳論からみた理想の教育とは
ご存知養老先生の教育論である。珍しくかなりくだけた調子の文章で、講演録の趣きである。論旨はこれまでの養老「唯脳」論の延長線上にあるもので、大まかには以下のとおり。
1)子供は「自然」のものである。大人が脳で描いた「意識」のとおりにはならない。それなのに、子供は大人の思うように育てられるという妄信が英才教育や早期教育ブームとなり、子供をだめにしている。
2)日本はこの50年で都市化が劇的に進んだ。その結果、都市=脳が作った社会に偏ってしまい、脳の力が及ばない自然=たとえば自分の体そのものを考えないような教育がまかり通っている。
3)都市化された社会は大人の社会であり、子供の都合よりも親の都合が優先される。子供は子供でなく小さな大人として扱われる。これは教育というよりも、子供の脳化である。
養老氏が東京大学を定年前に退官した理由のひとつにオウム信者の学生があったという。生身の人間が1時間も無呼吸で水に潜るとか、空中浮揚するという話を東京大学の医学生ともあろうものが本気で信じている。若者が何を考えているかわからなくなってしまったショックが「脳化」偏重教育への危機感につながっているのだろう。
人はパンのみにて生きるにあらず、という。しかし信仰であれ思想であれ、肉体=筋肉を離れた意識は、「人間」のなかに存在することができない。ゲームもテレビもパソコンも、読書だってたぶんそうだが、脳のなかでだけ完結してしまう世界はきっと脳にとって限りなく甘美なのだ。が、人間存在そのものにとってはとても危険な世界なのだ。
口語調なのでフレンドリーでとっつき易く流し読むにはよいが、展開がやや冗長で芯が掴みにくい。他著作同様、養老哲学は十分に堪能できるが、教育論としてこれだけ読んだ人はきっと面食らうのではなかろうか。養老ファンにはお勧めできるが、初めての人にはやや歯応えが強く噛み切れないかもしれない。
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